「女は弱い」




傷を負ったハンコックを船に乗せたルフィ。

面倒事に反対するナミだが、ルフィは頑としてそれを受付けない。

「こいつは俺を助けてくれた、だから助ける」

ナミはその時、ルフィの眼差しに妙な違和感を覚えた。



「ロビンの時と一緒だ、聞きゃしねーよ」

ゾロの一声に皆頷く。

ナミが折れ、チョッパーは医務室へと向かった。


「チョッパー、頼む」

いつになく不安そうな顔をするルフィにチョッパーは少し驚きながらも

「うん、任せろ!」

と元気よく答えれば、ホッとしたのかいつものルフィに戻った。


相変わらず美人には目が無いサンジは

愛情たっぷりの料理を、と調理室にこもる。

ゾロは昼寝、ナミとロビンは読書、、、と

皆それぞれ普段の通りに戻ったのだが・・・。



いつもの場所に、いつもの人がいない。

ルフィだ。

いつもなら船首にぶら下がり、前を見据える船長が

そこにはいない。


その事に皆、気付いていた。

ルフィの変化に。




ルフィは医務室に居た。

チョッパーは傷を手当てし、

熱を冷まそうと布を水で濡らす。

そしてルフィはただ黙ってハンコックの傍についているのである。


「ルフィ、心配なのか?」

チョッパーが尋ねると、暫くの沈黙の後、ルフィが口を開いた。

「こいつ、すげー強えーんだ。俺を助けてくれた。」

「うん」

「こいつは海賊女帝って呼ばれる位凄くて、国を持ってるやつなんだ」

「・・・うん」

「だけど、何故か、こいつが俺の為に何かをするとき弱っちく見える時がある・・・」

「?」

「こいつは、必死に俺の為に戦ってくれた。だけどこいつは、悩んでるみたいだったんだ・・・」

チョッパーは、ルフィのその真剣な顔にごくりと唾を呑んだ。

「こいつは何故か、俺の為にしてくれる。国の為を考えたら、俺を助けちゃいけないのに、だ。」


ルフィはそっと手を伸ばし、意識の無いハンコックの手を取った。

「泣きそうな顔をして、血まみれで俺の手を握って、言ったんだ。『この手を離せそうにない』って・・・」

チョッパーはそこで気付いた。

この世界一美しいと思わせる海賊女帝は、ルフィの事が好きなんだと。

「こんな強えー奴が、なんで俺の事になるとこんなに弱く見えるのか考えたら、、、」

ルフィはその手を強く握りしめた。

「何だか、守ってやらなきゃって思ったんだ・・・」

「ルフィ・・・」

「強えーのに・・・こんな傷なんかに苦しんで。何か、弱い時のこいつを何とか守らねーとって思うんだ」


チョッパーはまた気付いた。

ルフィもハンコックが好きだと言う事を。

そしてルフィは、自身のその想いに気付いていないということも。



「ん・・・」

「ハンコック!」

うっすらと目を開けるハンコックの視界にルフィが映る。

「ルフィ・・・無事か?」

「ああ、ありがとな!それこそ、お前のが大丈夫か!?」

笑顔を向けるルフィを見、

起き上がろうとして、激痛が体を走りボスッとベッドに倒れる。

「ハンコック!」

ルフィの声と共に手に強い感覚がして目をやれば

自分の手をしっかりと握るルフィの柔らかな手があった。

「ハンコック無理するな」

「ルフィ・・・」

ハンコックの顔は赤く染まっていた。

「お前、熱上がったのか?」

そっと額に手を置くルフィ。

ハンコックは一瞬、驚きの表情を見せ、やがて穏やかに微笑んだ。

「辛いか?なんかして欲しいことあるか?」

「よい、よいのじゃルフィ」

ハンコックの顔は益々赤くなる。

「そなたが手を握ってくれるだけで、わらわは十分じゃ」

「こんな事で治るのか?じゃぁ、ずっとしててやるよ!」

ルフィは笑顔を振りまいた。

「ルフィ・・・ありがとう」

ハンコックはルフィの手をぎゅっと握り、再び眠りに落ちた。






チョッパーから事の顛末を聞いたクルーは

出す声すらない。

暫くしてようやくナミが、

「あの眼差しはそういう事・・・」

と弱弱しく呟いたのだった。






  +   +   +


ル蛇の小説を!というリクを受けましたので
書いてみました。
初☆です!
ル蛇は私も大好きなのでとっても楽しかったです!!
ルハさま、こんな感じでもよかったでしょうか(汗
読んで下さった方ありがとうございました!