「取引」




ルフィとハンコックは森の一本道を進む。

進むにつれて薄暗く妙に気味悪い雰囲気を醸し出す辺りに注意を払いながら

木々の間から見える月を目印に伯爵城を目指した。


「ルフィ、すっかり夜になってしまった」

「おう、赤い花咲いてっかなー?」

「どうするつもりじゃ?伯爵の城の庭に生えると言う花をどう盗むつもりじゃ」

「そりゃおめー」

「?」

「ダッシュで盗って逃げる(どどーん)」


拳をぎゅっと握って、まるで正論だと言わんばかりに自信満々に言い放つルフィ。


「・・・ル、ルフィ・・・」

呆れ顔を見せるかと思いきや、ハンコックの頬はほんのり赤く染まり、

目は太陽のごとく爛々と輝いている・・・。


「男らしいのう、ルフィ」

「おう、正面から門叩いたら見つかっちまうから、塀を登るぞ」

「おお、流石じゃ!」

「よし、ハンコック、おめぇ捕まらね―ようにしろよ?」

「うむ、わらわはそなたから離れぬ!(一生)」


とろけた眼差しをルフィの背中に注ぎつつ、先を急ぐ二人。



それから半刻としない内に、大きな古びた城へと辿り着いた。


木の陰から城の様子を伺う二つの影。

「あの城だな、何だか暗えなあ」

「門番や衛兵といった者もおらぬようじゃな」

「よし、それじゃあ・・・」

ルフィは大きく辺りを見渡し、北側の塀から中へ入る事を提案した。

「あそこから入ろう」

ルフィの指示通り、ハンコックもそれに続く。


近くによると案外大きく立派な城で、伴って塀の高さも思った以上にあった。

「ゴムゴムの〜」

ルフィが大きく手を振りかぶったその時、

「待て、ルフィ。わらわが先に行く。」

「へ?なんで?」

「そなたのその入り方では目立ち過ぎる。わらわが塀を登って中の様子を見よう」


ハンコックはそう言って、高い塀の上に軽々と飛び乗り、身を屈めて中を覗いた。

暫くして下を見下ろし、小声でルフィに話しかける。

「よいぞ、ルフィ。誰もおらぬ。遠慮せず入って参れ」

ハンコックは中に誰も居ない事を確認すると、自身も塀の上に姿を現し、

塀の中へと飛び降りて行った。

「おっし」

続いてルフィも腕を伸ばして軽々と塀を飛び越える。


塀を越えた中には、鬱葱と生い茂る木々が所狭しと生えていた。

どうやら元々は丁寧に管理され、庭らしく在ったようだ。

所々、アーチ状の門や柵、レンガといったものが綺麗に並べられている。


「手入れされておらぬ故、伸び放題じゃ」

ハンコックは鬱陶しそうに枝をはらいながら辺りを伺う。

「赤い花はどこだ?」

ルフィはずかずかと緑の間を潜って、赤い花を探す。

ガサガサという音が不自然に鳴り響いた。

「ルフィ、少し静かにせぬと聞こえてしまうぞ」

ハンコックはルフィを追いかける。


広い中庭を右往左往しつつ、城の裏側に向かって進んで行くと、

急にそれまで濃く茂っていた背の高い木々が終わりを告げ、

空を見渡せる拓けた芝生の土地にでた。

その場に出ると姿も曝してしまう為、ハンコックは辺りをよく確認してから茂みを抜ける。


(変じゃ・・・この城、庭どころか城内にも人の気配を感じぬ・・・)

訝しむハンコックの横で、突然走り出すルフィ。


「あったぞ!」

ルフィは裏門のすぐ手前に綺麗に手入れされている花壇を目指していた。

見ると、遠目でも分かる程の美しい鮮やかな赤をした花が咲いている。

ハンコックもそれに続き、花壇の傍に進んだ。


「よし、赤い花は見つけたな、」

ルフィは綺麗に咲き誇る赤い花の一つを手に取り、

ハンコックの方へと向き直った。


「ハンコック・・・」

「な、なんじゃ・・・?」

赤い花を手に見詰めてくるルフィに、ハンコックの顔も赤く染まりつつある。

ルフィは一つだけ手にしていた花を見やり、何やら考えた後に、うんと頷いて

再び花壇に手を伸ばしてさらに3本花を摘み、それらを束ねて花束のように持った。


(なんじゃ、ルフィ・・・まさか、これが世に聞く『プロポーズ』!?)

ハンコックは高鳴る胸を抑え、ルフィの目を眩しそうに見つめた。


「ハンコック、この花を持って町へ行ってくれ」

ルフィは4本の花をハンコックの手に握らせた。

「ルフィ、そなたは・・・」

「俺はナミとロビンを助けなきゃならねえ」

「ならばわらわも!」

ルフィは迫るハンコックの肩に手を掛けた。

「お前は狙われてるかもしれねえんだ。」

「!」

ハンコックは漸く気付いた。

何故、いつもなら正面堂々恐れを知らずに正面切って乗り込むルフィが

塀を乗り越えてこそこそと赤い花だけを探していたのか。

本来のルフィならきっと、捕まっているクルーを助ける為に、

伯爵の下へ乗り込んで、救いだして、それから赤い花を貰って男達を助けるだろうに。

それをしなかったのは、ハンコックの為だった。

森の中で見た弓矢に刺さった紙切れと、町の屋敷の主から聞いた話とで

ハンコックも狙われているという懸念があったからこそ、ルフィは危ない事はせずに

ハンコックを守れるように行動をしていたのだ。

「ルフィ・・・」

「この赤い花で、俺の仲間を助けてやってくれ」

ルフィはニシシと笑みを見せると、ハンコックを町へと向かわせる為に

塀近くまで引っ張った。

ルフィを心配するも、引かれる手に安心感を覚える。

(ルフィならきっと、大丈夫じゃ)

自らに言い聞かせるように呟くと、

下で手を振るルフィを名残惜しげに見詰めつつ、

町で待つ眠った男達を起こすべく、塀を下りて森へ向かった。













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ゲハハ

まだまだ続きます!